【1P5時間!】漫画1枚完成までの時間の『詳細』公開【時短方法も】

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漫画を描いていると中々完成せず、その膨大な漫画制作時間に戸惑うことがあります。

あかにゃん

最初は楽しく描いていたのに中々完成しないにゃあ

あおにゃん

プロはどのくらいかけて1Pを描いているのでしょうか?

きいにゃん

俺は時間なんて気にしないで倒れるまで描き続けてやるぜ!

すいへい

プロの原稿ができるまでの時間を具体的に紹介し、取り入れている時短方法も解説します

プロの漫画家の作業工程を本などで紹介する場合、1、下描き 2、ペン入れ 3、仕上げ の3つで紹介することがほとんどで、例えば枠線引きにどのくらい時間をかけているかなどはわからないことが多いです。

このページでは下描きからの作業工程を【20工程】に細分化し、それぞれの時間配分を具体的に解説していきます。

最初にぼくの制作時間を書くと下描きから始めた場合、1Pあたり『5時間』程度かかっています。1話16P描くとすると80時間になります。

プロの原稿制作スピードを知り『時短』方法を取り入れて漫画を量産してください。

後半では制作が早い漫画の特徴も解説していきます。

本ページ筆者の経歴

漫画家。PN水兵きき。連載9回立ち上げ。漫画家協会会員。クリスタ検定(マンガ)合格。ココナラ漫画添削PRO認定。デジコレ『魔王だけどレベル1~』作品紹介ページ

【実録】プロが普段の1.5倍速で原稿を描くとどうなる?【弊害と対策】

目次

1P当たりの時間配分の詳細

作業工程を以下のように細分化して、ぼくの制作時間を紹介します。

すいへい

ネームは出来ている状態で『下描き』からはじめます。カッコ内は1P及び一か所あたりの時間です

『下描き』から『ペン入れ』まで

  1. 枠線、構図再編、キャラのアタリ【1P2分~10分】
  2. キャラ、フキダシの下描き(ここでは背景は描かない)【1P1時間~1時間20分】
  3. スキャン取り込み【1P1分】
  4. 取り込み原稿の位置サイズ微調整【1P1分】
  5. 枠線作り【1P2分】
  6. フキダシ【1P3分】
  7. ペン入れ~キャラのペン入れ(背景は除く)【1P1時間~1時間半】

『仕上げ』

  1. 線画修正【1P10分~15分】
  2. 各レイヤー作成【1P20秒】
  3. 効果音(擬音)ペン入れ【1P3分】
  4. キャラ基本トーン貼り【1P5分】
  5. 影トーン貼り【1P5分~10分】
  6. 効果トーン貼り【一か所5分~10分】
  7. 白抜き【一か所2分】
  8. 流線、集中線【一か所3分~10分】
  9. 目の塗り【1P5分】
  10. ホワイト【1P3分~5分】
  11. 背景の検索DL、位置サイズ調整、線画抽出【一か所5分~15分】
  12. 背景トーン貼り【1P5分~15分】
  13. 特殊エフェクト【一か所5分~15分】⇒完成

①枠線、構図再編、キャラのアタリ【1P2分~10分】

ネームを元に原稿用紙に枠線とキャラのアタリを取ります。

すいへい

ぼくは下描きまでは原稿用紙に描きます。その後パソコンに取り込み
ペン入れと仕上げをしています


ネームの時に完璧な構図が出来ていれば、この工程はすぐに済みますが、ぼくはネームを見直して構図を変えることが多いので時間がかかります。

ネーム

ネームを元に原稿用紙に下描きの・枠線・構図の再編・キャラのアタリを取ります。

原稿用紙に枠線とキャラのアタリを描いたもの

②キャラ、フキダシの下描き(ここでは背景は描かない)【1P1時間~1時間20分】

キャラとフキダシの下描きです。※背景は3Dデータを使うのでここでは描きません。

すいへい

ぼくの漫画はキャラが売りなので、デッサンが狂わないように丁寧に描くため時間がかかります

下描き

プロが行う下描きの時短方法

時計を用意して、分針を12に合わせます。1時間で1P終わらせると決めて取り掛かります。

すいへい

専用の時計を用意しています。時間を見ながら進めることで『締め切り』を作ります。子供のお迎えまでにこのページまで進める!というのも効果があります

③スキャン取り込み(下描きはアナログ)【1P1分】

下描きをパソコンに取り込みます。

クリスタで連続スキャンを選び1話分全て一気に取り込みます。(複数ページ作成ができるEXのみの仕様)

デジタル原稿制作時の原稿解像度は600ですが、素早く時短で取り込むために解像度は300dpiにしています。

すいへい

解像度300を解像度600の原稿用紙で拡大しても下描きなら問題なし!素早く取り込めます

④取り込み原稿の位置サイズ微調整【1P1分】

解像度600の原稿に下描き(解像度300)を表示させたので、拡大し、位置を微調整します。

すいへい

アクションに登録しておくと一瞬でサイズ調整できます。

取り込み時にズレた枠線

青が原稿用紙の内枠。黒が下描きの内枠。

レイヤー移動ツールで原稿の内枠にキーボードで微調整します。

オートアクションの作り方はこちらをどうぞ。
【使い方・作り方】使わなきゃ損!クリスタの『オートアクション』【素材提供】

プロが行う時短方法

オートアクションに登録できることは、登録しておく。というのがデジタル作画の時短の基本です。

⑤枠線作り【1P2分】

コマ枠ツールで枠線を描きます。オートアクションを使うと便利です。

枠線


こちらも参考にどうぞ。
【それ遠回りかも?】コマ枠ツールで30秒でワク作成【提供アクションで時短】

枠線を描いたら『ラスタライズ』して外枠を白で塗りつぶします。

⑥フキダシ【1P3分】

フキダシツールでフキダシを描きます。

枠線の外にはみ出すか、枠線内に納めるかは目立たせたいかセリフかどうか?や全体のバランスで決めます。

フキダシ

枠外にフキダシを出したい場合は、『レイヤー』も枠線レイヤーよりも上に配置します。その場合フキダシレイヤーは2つになります。

⑦キャラのペン入れ(背景は除く)【1P1時間~1時間半】

キャラのペン入れです。コマ数や重要なシーンによって時間は変わります。

あとで修正しやすいようにベクターレイヤーにペン入れをします。表現色はモノクロにします。
(グレーやカラーでは間違えたときに修正が面倒だったり、思った線にならないことがあります)

ベクターレイヤーは、描いた線を拡大・縮小しても画質が劣化せず、形や太さも自由に変えられるレイヤーです。

たとえば、ペン入れした線画を後から劣化なく自由に修正することができるのでとても便利です。

https://www.clipstudio.net/oekaki/archives/153229#:~:text=%E3%83%99%E3%82%AF%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%83%AC%E3%82%A4%E3%83%A4%E3%83%BC%E3%81%AF%E3%80%81%E6%8F%8F%E3%81%84%E3%81%9F,%E3%81%A7%E3%81%8D%E3%82%8B%E3%81%AE%E3%81%A7%E3%81%A8%E3%81%A6%E3%82%82%E4%BE%BF%E5%88%A9%E3%81%A7%E3%81%99%E3%80%82

はみ出しの修正もなぞるだけで出来て便利!

すいへい

液タブでペン入れをしています。ここでも下描き同様、時計を利用して1時間で1P終わらせると決めて取り掛かります。

ペン入れ

プロが行うペン入れの時短方法

時間が1時間をオーバーした場合は、次のページで取り返す!と決めて時計はそのままで次のページに取り掛かります。

すいへい

あとで疲れますが、格段に集中力が上がります

⑧線画修正【1P10分~15分】

線画の修正です。線のはみ出しを『ベクター用』の消しゴムツールで修正します。

ペン入れの線の本数や状態で修正にかかる時間は前後します。気になるデッサンがあればここで直します。

終了したらペン入れ線画をラスタライズします。

ペン入れ

⑨各レイヤー作成【1P20秒】

仕上げを行うためにレイヤーを新規作成します。ぼくがこの時点で作成する基本レイヤーはこちらです。

オートアクションに登録しておくと便利です。

⑩効果音(擬音)ペン入れ【1P3分】

ペンツールで効果音(擬音)を描きます。効果音の白抜きもアクションに登録しておくと良いでしょう。

すいへい

効果音は描いたらレイヤーを非表示にします。表示していると枠線からはみ出した効果音の白抜きなどから狙った選択範囲を取れないことがあるからです

⑪キャラ基本トーン貼り【1P5分】

キャラの髪の毛や、服の色などを階調の違うグレーと黒で『塗りつぶしツール』で塗ります。

ぼくのトーンの貼り方はその都度トーン化せず、最後にまとめてトーン化します。

こちらの記事も参考に。

基本塗り

外枠の外に階調を分けたグレーと黒を用意してスポイト(キーボードのALTでショートカット)を利用して素早く塗ります。

こちらのページのstep7からフォーマットをDLできます。
【大手出版社投稿OK】クリスタ漫画制作!プロの手順【原稿フォーマット無料配布】

⑫影トーン貼り【1P5分~10分】

ペンツールと塗りつぶしツールでキャラの影を付けます。重要な所はグラデーションツールでグラデをかけたりします。

⑬効果トーン貼り【一か所5分~10分】

効果トーンを貼ります。キャラの心情やその場の臨場感を表す効果トーンを貼ります。

狙った効果がクリスタのソフト内に見つからない場合はassetから探します。

影と効果トーン

⑭白抜き【一か所2分】

自動選択ツールを用いて白抜きをします。

キャラが埋もれないように白抜きをします。白抜きの方法はこちらをどうぞ。
【大手出版社投稿OK】クリスタ漫画制作!プロの手順【原稿フォーマット無料配布】

⑮流線、集中線【一か所3分~10分】

図形ツールで流線、集中線を入れます。

図形ツールの使い方や集中線、流線の大切さはこちらをどうぞ。
【3つのポイント】集中線、流線ツールの使い方【PC負荷NG】

白抜きと集中線

白抜きと線は背景を入れてから描くほうが全体像が掴みやすい時もあります。

⑯目の塗り【1P5分】

キャラの一番重要な『目』にベタやトーンを貼ったり、ホワイトを入れます。

すいへい

目はとても大切です。時間を気にせず納得いくまで仕上げます

⑰ホワイト【1P3分~5分】

ペンツールで髪の毛のハイライトや、全体のバランスを見てホワイトを入れます。

ホワイト(画像の左にホワイト)

⑱背景の検索DL、位置サイズ調整、線画抽出【一か所5分~15分】

背景を入れます。手持ちの3d背景に目当ての物が無かったらクリスタのassetからDLします。サイトはこちら

位置を合わせて線画を抽出します。

プロが行う背景の時短方法

背景は全て3D背景や便利なブラシを用いて行います。
手描きにこだわって個性ある背景を描くことは大切であり理解できます。しかし漫画を量産することにはまったく向いていません。背景にはとてつもない時間がかかります。

すいへい

ぼくは背景専門でアシスタントをしていたことがありますが、今は手描きは不要だと考えていて全て3D背景とassetの便利なブラシを使っています

ライン抽出、LT変換の使い方はこちら。

⑲背景トーン貼り【1P5分~15分】

線画抽出した背景にトーンを貼ります。

塗り方は⑧、⑨と同じです。キャラと背景はレイヤーを分けましょう。キャラの時よりは大まかにトーン貼りを行います。

  1. キャラ基本トーン貼り【1P5分】
  2. 影トーン貼り【1P5分~10分】

⑳特殊エフェクト【一か所5分~30分】⇒完成

特殊なエフェクト(効果)の仕上げをします。

すいへい

最も時間が読めない作業です。デジタルツールの使い方をおさらい挑みます。思った通りに行かないことも多いです

時間がよめないのでぼくは最後にまとめて特殊エフェクトを行っています。

時短方法のまとめ

ぼくが行っている時短方法をまとめました。

  1. タイマーを1時間に合わせて『下描き』と『ペン入れ』をする
  2. オートアクションを活用する
  3. 3D背景を活用する
  4. 仕上げは1Pごとではなく、同工程を全ページまとめて行う
  5. ペンタッチを多用する
  6. 黒ベタを多用する
  7. 仕上げアシスタントを雇う

1 タイマーを1時間に合わせて『下描き』と『ペン入れ』をする

時計を使って時間を決めて取り掛かる。

スマホなどのタイマーでは常に時間が見れるわけでは無いので、卓上時計を用意してチラチラ見ながら執筆します。

すいへい

ぼくはこれはとても効果があります。特に急いでいる時に有効です

2 オートアクションを活用する

オートアクションに登録できることは、登録しておく。

レイヤーを1枚ずつレイヤー作成し、名前や合成モード、表現色を変更していると時間がかかります。オートアクションに登録して使いこなしましょう。

3 3D背景を活用する

量産を目指すなら3D背景を使いましょう。

上記でも触れましたがぼくは以前、背景を手描きしていました。しかし恐ろしく時間がかかります。
現在は3Dデータで短時間で済みます。

すいへい

クリスタ導入以前は手描きの背景で時間がかかってました。クリスタは神!

4 仕上げは1Pごとではなく、同工程を全ページまとめて行う

同じ作業は全ページその作業だけ行う。

例えばキャラの基本トーン(服や髪)は1Pごと行わず、その作業だけ全ページ終わらせます。
こうすると塗り残しや色間違いを防ぐことが出来、早く勧められます。

5 ペンタッチを多用する

ペンのタッチで影を入れたり、服の色味やシワを表現すれば仕上げでトーンを貼る量が減って時間短縮になります。

6 黒ベタを多用する

ベタを多用すると画面が締まってトーンを多く貼る必要がなくなり時短に繋がります。

7 仕上げアシスタントを雇う

仕上げを全てアシスタントさんに任せれば、作者は線画修正までで済み1P当たり3時間ほどの計算になります。

16Pだと48時間(丸2日)ほどで済みます。

すいへい

こう考えると週刊連載も見えてきます!

漫画制作が早い作品の特徴は?

漫画を描き上げるのに時間がかかって困る。という方は制作が早いジャンルの漫画を描いてみるというのもいいかもしれません。

漫画の作風によっては荒い線や、デッサンが若干狂っていても大丈夫な漫画があります。

そのジャンルはこちらです。

  • ギャグ漫画 
  • アクション漫画 

アクションの多い漫画は一本で線をキレイに描くより、何本も線を重ねることで勢いのある絵になることがあります。

線を重ねられるということはデッサンが多少狂っていても、次に重ねる線で微調整が出来るため下描きは勿論、ペン入れも素早く行えます。

逆にキレイな一本線、デッサンの狂いの無い作画を求められがちの漫画というと、可愛い女の子やイケメンな男の子が売りの漫画です。

それらは丁寧に描かれた絵を描く必要があり、作画に時間がかかります。

【1P5時間!】漫画1枚完成までの時間の『詳細』公開【時短方法も】まとめ

下描きからずっと原稿に集中していれば早く原稿が完成するかもしれません。

しかし集中するという行為は疲れに繋がります。ぼくは例えばモブキャラの下描きや、仕上げの時はテレビやYouTubeをつけて手だけ動かしています。

そうすることで疲れをなるべく溜めずに、次の漫画制作に繋げられるようにしています。

疲れを溜めすぎることは次のアイデアを出すための頭が働かなくなることがあり漫画家にとって良くありません。

すいへい

よく見る漫画家の修羅場(締め切り間際)はなるべく避けましょう。次の漫画制作に響きます。ぼくは疲れすぎるとやる気が出ないです

そのため16Pを7日間で仕上げることを目標にしています。※この目標には個人差があります。

一日当たり11時間ちょっとの計算になります。

すいへい

好調だと6.5日。不調だと10日かかることもあります

1Pを5~6時間で描ければ、ネームの進行にもよりますが雑誌の一応基準である月刊32Pもそんなに無理をしないで描けると思います。デジタルをフル活用しましょう。

クリスタが無い時代・・・ぼくが漫画制作のストレスで病気になった時の話はこちらから。
全ての歯車がかみ合いませんでした。

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