今まで商業誌で8作の連載を立ち上げたぼく漫画家水兵ききは現在、漫画家志望者のデビューをお手伝いしています。
漫画家がお手伝いするとデビューできるにゃ?
それは正直に言ってわかりませんが、一人で考え込むよりは視野が広がって良いと思います
その漫画家志望の人と2021年2月にこんな目標を立てました。
一か月以内に10本のネームを描いて『ジャンププラス』に持ち込みをしよう!という目標です。
そして順調にネームを描き上げ、コロナの緊急事態宣言終了後の3月中旬に集英社『ジャンププラス』に持ち込みをしてきました。(この記事は2021年のものです)
結論から書くと、残念ながらこの持ち込みでは彼女に目標としていた『担当』は付きませんでした。
では、ジャンププラスの編集者からはどんな感想をもらったのか?なぜ担当が付かなかったのか?その時の『持ち込み』の詳細を解説していきます。
現役編集者は漫画のどこを見るのか、漫画家を目指す方にはとても勉強になると思います。
お手伝いをしている漫画家志望者はぼくの妻です。詳細はこちらの記事から
デビューをお手伝いその1。
デビューをお手伝い。番外編。
遊佐いつか先生(妻)のエッセイ漫画はこちらから。
持ち込みの目標は『担当』が付くこと
漫画家志望である彼女(妻)は現在体調があまり良くないので、ぼくも持ち込みに付き添うことになりました。(事前にその事をお伝えしてアポイントを取りました)
1時間半前には集英社の近くに着き、お昼ご飯を食べながら時間を待ちました。
ぼくの漫画の持ち込みではありませんが、持ち込みは何度体験してもそわそわします。もちろん彼女の緊張はぼく以上でしょう
そして時間が来たので集英社へ。受付横にある紙に来社目的を書き提出。
持ち込みの目標は『担当』がつくことです。
担当がつくために実践したことは
- 持ち込みする漫画の良いところ、悪いところを探しておく。
- 編集者さんへの質問を考えておく。
- 別の漫画のネームも用意する。
です。
下の記事で持ち込みを成功させるための方法を書いています。
区切られたブースに案内されると編集者さんが登場、挨拶をしていよいよ持ち込みスタートです。
現役編集者さんからの感想
10本のネームがあると伝えると、編集さんから自信のあるものから見せてくださいと言われ、デスゲームものを見てもらうことにしました。
これは連載用に描いたネームで3話分あります。
持ち込み未経験の方ですと連載用のネームでも見てくれるのか不安が有ると思いますが、まったく問題はありません。
なぜなら単純に、編集者は面白いものを描ける作家さんを探しているからです。
もちろん何も言わず見てくれました。
もちろんネームもOKです。その際は画力の参考になる完成原稿も必ず持って行きましょう
ただ、人に見せるネームの場合は注意が必要です。文字は必ずキレイに書きましょう。
この持ち込みのネームでは写植を打ちました。
読み終わるまで長い沈黙が、、、そして、、、
第一声はこうでした。
『面白く読めました。設定も斬新に感じました』
!!!
これは好感触!
続いて、
『限定条件の中、3話まですんなり読めました』
この時は『これもう担当なってくれるでしょ!』って思ってました
ストーリーと設定は合格のようでした。
『その1』でも書いたように彼女はすでに一定の評価は受けていて、
自由に投稿できるジャンプルーキーの『連載争奪ランキング』で常に上位を行ったり来たりするくらいの実力はあります。
しかし、最初に伝えたように彼女に『担当』は付きませんでした。
ここからはキャラクターの話になりました。
このネームのキャラクターが『悪い』とは言われませんでしたが、キャラを魅力的に描こう。と言われました。
『ジャンプと言えばキャラクター』が、ここで出てきました。
ワンピースを例にして話していただきました。
要約すると、
『ひとつなぎの大秘宝』ってなんだろ?と思って毎週読む読者は少なく、ルフィや他のキャラクターを見たいから読んでいる。
ということです。
どうしたら魅力的なキャラが描けるか?と聞くと、こう助言いただきました。
『プロもみんなそこに悩んでいて、いろいろ試して試行錯誤している』
魅力的なキャラはどうやって作るのか?それは誰にもわかならいということだと思います。
キャラクター作り、それは漫画家の永遠のテーマ
予期せぬ展開
1つ目のデスゲーム漫画の感想が終わると次の漫画を。と編集の方が言った時に予期せぬ事態になりました。
「時間的にあと1本です」
「!!!!?」
その時まだ30分も経っていませんでした。
10本全てを読んでもらえる時間があるとは思っていませんでしたが、2作で終わりは想定外でした。
ぼくが今まで持ち込みをした時は、時間に制限は特になく1作でも1時間前後は見て頂いていました
おそらくコロナの時期のため早めに切り上げるようにしていたのかと思います。
そして彼女は最後の作品も、自信があった別のデスゲームのネームを見てもらうことに。
こちらの漫画の編集者さんからの感想は・・・
『何を見せたい漫画かすぐにわからない』と言われました。
2~3Pまでに『何のジャンルで、何を見せる漫画』なのか、はっきりさせましょう。
事前にぼくもチェックしていましたが、デスゲーム慣れしていて気づきませんでした。
実はネーム10本中3本がデスゲーム漫画でした
読者は何の漫画かわからないと読むのをやめる。と言われました。
こうして2作のネームの感想をいただきました。
しかし、ここで更に予期せぬ展開が。
どうやらもう一作まで読んでいただけるとのことでした。
次はギャグ漫画のネームを見せることに。
こちらの漫画の編集者さんからの感想は・・・
『キャラクターの役割がぶれている』ということでした。
このネームを事前に読んだ時にぼくも気になり伝えましたが、他のネームの直しで手が回らないようでした。
この後、別の漫画の完成原稿も見ていただきました。
『絵のアングルがほとんど同じ』と言われました。
こうして『ジャンププラス』への持ち込みは『担当』がつくことなく終了しました。
ぼく水兵がジャンプとニアミスした時の記事はこちら。
【警告】失敗した漫画家が教える『ジャンプ』で描きたい人が知っておきたい心構え
漫画家志望者のデビューをお手伝い。進行中エピソード2。~出版社へ持ち込み~まとめ
一本目の漫画はとても高評価で『いけるかも!』と思いましたが、担当にはなってもらえませんでした。
担当になってもらえなかった理由としては、
持ち込みにぼくが付き添ったことで、彼女の体調が悪いという強いアピールになってしまったかもしれません。
漫画は体力を使うので不健康は悪い印象を与えてしまう可能性があります
(しかし彼女に限っては線にブレがあるわけでもなく、なにより漫画を描くのが大好きなので商業で描くにあたり体に問題は無いと思います)
その他の理由としては、ジャンプは持ち込み、投稿が多いので簡単には担当になってもらえないかもしれませんし、
編集者さんに言われた通りキャラクターの魅力が足りなかったのかもしれません。
単純に個人的に好みでは無かった場合もありますし、デスゲームを描ける作家は揃っている可能性もあります。
担当になってもらえなかった理由は考えてもキリがありません。一度の持ち込みで諦めてはいけません。
それからこの持ち込みで聞いた話として、ネット漫画、アプリ漫画ではデスゲームが大変人気があるそうです。
たしかにデスゲームは多いです。流行に乗るというのも商業で漫画を描きたいなら大切なことです
漫画家志望者をお手伝い。その3はこちらから。
妻の漫画はこちらから読めます。(ジャンプルーキー)
遊佐いつか
単行本も角川より出ています(正確にはデビュー済み。再デビューが目標。)
遊佐いつか先生(妻)のエッセイ漫画はこちらから。
描きたい!!を信じる 少年ジャンプがどうしても伝えたいマンガの描き方(週刊少年ジャンプ編集部)
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