漫画制作のために大型で描きやすい液晶タブレットを検索すると、wacomの高額で高性能な機種が目立ちます。
しかし他にお手頃のメーカーは無いかな?と検索を続けると出てくるのがXPPenの液晶タブレットです。
wacomが有名だけど高額にゃ~wacomじゃないとダメにゃ?
XPPenも気になります
wacomとXPPenの液タブを実際に使ったプロ漫画家のぼくが2機種を対決させました!
対決!?
比べたのは、ワコム『Cinitiq22』とXPPen『Artist22R Pro』で、ほぼ同サイズの液タブです。
比べた項目はこちらの7項目です。
- ラウンド1 価格
- ラウンド2 スペック
- ラウンド3 見た目
- ラウンド4 実践
- ラウンド5 ネットの感想
- ラウンド6 保証期間&サポート
- ラウンド7 ランニングコスト
挑戦者XPPenは王者wacomの液タブとどのくらいの差があるのでしょうか?
結果から先に描くと、XPPenの液タブは漫画制作をする上で十分な性能を発揮しました。その詳細を解説します。
関連記事はこちら。
【プロが連載作で試す!】XPPenの『液タブ』は商業漫画で使える?【検証】
【どっち?】XPPenの液タブを買うなら『アマゾン』?『公式ストア』?
XPPen公式サイトはこちら。
王者wacom[Cinitiq22] 対 挑戦者XPPen[Artist22R Pro]比較対決
ラウンド1 価格
まずは価格勝負!
wacom[Cinitiq22] のお値段は2023年5月1日の価格改定により、121,000円から162,800円(税込)に値上がりしています。
対するXPPen[Artist22R Pro]は78,500円(税込)です。つまり
wacom[Cinitiq22] 162,800円(税込) 対 XPPen[Artist22R Pro]は78,500円(税込)
両機種共に販売サイトで割引があるものの、価格は圧倒的にXPPenの液タブに軍配が上がりました。
しかもCinitiq22はフィルムを付けるとこちらの値段になります。フィルム付き171,578円。
(Artist22R Proは滑りを抑えるアンチグレアフィルムが最初から貼ってあります)
やはりXPPenは値段が大きな魅力!ここは予想通りXPPenの勝利〇
ラウンド2 スペック
続いてスペック比較です。
以下のスペック表は公式サイトの2機種のスペック表です。埋まっていない部分の詳細はスペック表の後でそれぞれ解説します。
最初にwacom[Cinitiq22]から
液晶パネル | 表示サイズ | 最大表示解像度 | 液晶方式 | 画素ピッチ | 最大表示色 | 応答速度 | 最大輝度 | コントラスト比 | 視野角 | 色域 | 色深度 |
wacom[Cinitiq22] | 21.5型 | フルHD (1920 x 1080ドット) | IPS方式 | 0.248 x 0.248 mm | 1677万色 | 22ms (標準値) | 210 cd/m2 (標準値)(ガラス含む)白色点測定時の輝度(中央)180 cd/m2(最小値) | 1000:1 (標準値) | 水平178°/垂直178°(標準値) | NTSC カバー率(CIE1931) 72%(標準値) sRGB カバー率(CIE 1931) 96%(標準値) |
ペン入力 | 読取方式 | 読取分解能 | 取可能高さ | 傾き検出レベル | 筆圧レベル |
wacom[Cinitiq22] | 電磁誘導方式(EMR) | 最高0.005mm | 5mm | ±60レベル | 8192レベル |
これが16万円を超える液タブのスペック!
続いてXPPen[Artist22R Pro]
液晶パネル | 表示サイズ | 最大表示解像度 | 液晶方式 | 画素ピッチ | 最大表示色 | 応答速度 | 最大輝度 | コントラスト比 | 視野角 | 色域 | 色深度 |
XPPen[Artist22R Pro] | 21.5型 | フルHD 1920*1080 | IPS | 1670万色 | 14ms | 250 cd/㎡ | 1000:1 | 178° | 88% NTSC , Adobe® RGB≧90%, sRGB≧120% | 8bit |
ペン入力 | 読取方式(ペン技術) | 読取分解能 | 取可能高さ | 傾き検出レベル | 筆圧レベル |
XPPen[Artist22R Pro] | EMR技術 | 10mm | 60 ° | 8192 レベル |
素人目にはそれほど遜色ないような気がしますね・・・
差のあるスペックを解説。
応答速度
『25ms以下』の数値なら遅延を感じないとされている。低い方が早い。
最大輝度
数値が大きいほど明るい。もちろん暗く調整可。
色域
液晶モニター等は、人間の目が認識できる様々な色を再現しますが、人間が認識できる全ての色を再現しているのではなく、限られた色の範囲を再現しています。この色の範囲を色域(しきいき)と呼び、色域は規格によって決まっています。
https://direct.pc-physics.com/color-gamut/standard.html
NTSCとRGBがほぼ同じ範囲でsRGBより色の幅が広い。sRGBの色域はNTSCと比較すると72%程度。数値はカバー範囲。
続いて埋まっていない部分の解説。
読取分解能(wacomのみ表記)
ペン先の動きを検知する項目。数値が小さいほど高性能。
画素ピッチ(wacomのみ表記)
画素と画素の距離のこと。 液晶モニターの画素同士は隣り合っているので、【一つの画素の大きさ】
色深度(XPPenのみ表記)
デジタル画像で1ピクセルが表現できる色数の表現。
意外とスペック上の数値はほぼ変わらず・・・ここは引き分け!
ラウンド3 見た目
以下の写真はぼくの家に設置したときの両機種です。(Cinitiq22は半年ほど使い込んでいるので、取り切れなかった汚れが少しあります)
汚い机で申し訳ないです
wacom[Cinitiq22]
XPPen[Artist22R Pro]
共にシンプルな設計でとてもスタイリッシュです。価格の安い[Artist22R Pro]も安っぽさは無く、十分な上品さだと感じています。
見た目は引き分け!
ラウンド4 実践
実際に商業連載中の漫画制作で使用しました。
2023年3月から小学館のデジコレで連載が開始された、当ブログ管理人の漫画『魔王だけどレベル1なのでカノジョたちに守ってもらいます!』で2機種を比べてみました。
この漫画が気になったらこちらもどうぞ。
【作者が解説】『魔王だけどレベル1なのでカノジョたちに守ってもらいます!』ってどんな漫画?
デジコレ(小学館eコミックストア)
15話まではワコムの『Cinitiq22』を使用して描いて、16話からXPPen『Artist22R Pro』でペン入れから仕上げまで全てで使用しました。
その時の詳細はこちらもどうぞ。
【プロが連載作で試す!】XPPenの『液タブ』は商業漫画で使える?【検証】
どちらも特に問題なく使用できました。
16話以降、現在19話までXPPenの『Artist22R Pro』を使用して描いています。
(追記。2023年12月現在29話までXPPen液タブ継続利用中)
どちらも何の問題もなく使用できます!ここは引き分け!
ラウンド5 ネットの感想
ネットの評判対決。
wacom
ポジティブな評価。
ネガティブな評価。
XPPen
ポジティブな評価。
ネガティブな評価。
液タブのシェア1位を誇るwacomだけあってツイート数はXPPenよりかなり多かったです。(XPPenは液タブシェア2位)
全体の評価として感じたのは信頼性で選ぶならwacomの液タブ。
値段で選ぶならXPPen。でもXPPenの液タブも十分使える。
という感じでした。
とはいえツイート数が多いということは何かちょっとした困った時に、使っている人から助けてもらえる可能性が高いということにもなります。
なのでネットの評判はシェア1位、信頼性のwacomの勝利!
ラウンド6 保証期間&サポート
wacomの保証は製品や購入地域によって異なります。
Wacom Cintiq 22の製品保証は以下の通り地域によって異なります。 日本、中国、アジア太平洋地域は1年。 USA、カナダ、南米は1年。 欧州、アフリカ、中東は2年。
https://support.wacom.com/hc/ja/articles/1500006334762-Wacom-Cintiq-22-DTK-2260-%E3%81%AE%E8%A3%BD%E5%93%81%E4%BF%9D%E8%A8%BC%E6%9C%9F%E9%96%93%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6
該当製品は日本で購入したので1年。
これに対してXPPenは、
量販店、ネットサイトで購入すると1年です。しかし公式サイトなら全ての液タブが18か月になります。
保証期間は日本ならXPPenに軍配!
XPPen液タブの購入は『保証期間18か月』の公式サイトで。
続いてサポートについては、wacomは国内でも屈指の高い顧客満足度を誇っています。さすが信頼のwacom。
サポートはwacomが有利!保証期間&サポートはトータルで引き分け!
とはいえ、ぼくに限っては両機種を使っていて困ったことは何もないのでサポートに連絡するような事態は起こっていません。もちろんこの先はわかりませんが。
ラウンド7 ランニングコスト
ランニングコストとは、運転費用と維持費用のことです。
液タブにかかるランニングコストは主に消耗品である『ペン芯』です。
wacom公式のペーパーライクフィルムを画面に貼ると、ペン芯がとても削れます。ぼくが32Pの作品を仕上げまで行うと14~15本ほどのペン芯が必要でした。
ペン芯は30本入り1600円程(アマゾン価格)かかるので毎月32P描くと1年で1万円近くかかります。
対するXPPenのフィルムは比べると薄いゴムのような質感で、ほとんどペン芯は削れません。64P仕上げてもまだ1本もペン芯を変えていません。
(追記。XPPenの液タブ導入後一度もペン先を変えることなく商業連載していた作品41話最終話まで描き切りました。ペン先は波の筆圧ではほぼ消耗しません)
XPPenは購入した後にペン芯でそんなにお金がかからないんですね
これはすごく嬉しい!ここはXPPenに軍配が上がります!
2機種の対決はこのような結果になりました
wacom[Cinitiq22] | XPPen[Artist22R Pro] | |
ラウンド1 価格 | 〇 | |
ラウンド2 スペック | △ | △ |
ラウンド3 見た目 | △ | △ |
ラウンド4 実践 | △ | △ |
ラウンド5 ネットの感想 | 〇 | |
ラウンド6 保証期間&サポート | △ | △ |
ラウンド7 ランニングコスト | 〇 |
価格の面でXPPenの液タブは圧勝しました。ほかの
【対決!】王者wacom[Cinitiq22] 対 挑戦者XPPen[Artist22R Pro]まとめ
このページで検証した勝敗は両機種をじっくり使用した当サイト管理人が感じた個人的な結果です。
高額商品の購入をためらって時間が過ぎるくらいなら、お手頃価格の商品を選択して早く漫画を描き出すことが大切かもしれません。その上、浮いたお金でパソコン導入費用の多くの部分を負担できます。
大きいサイズの液タブを買うか買わないかは、漫画家を本気で目指すかどうかの覚悟の差だと思います。
購入の参考になれば幸いです
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補足
1つ補足したいところは、wacom[Cinitiq22]はサイドボタンの無い機種です。
なので比べるなら本当はXPPen[Artist22R Pro](サイドボタン有り)ではなく『Artist22セカンド』(サイドボタン無し、同サイズ)と比べるのがよかったかもしれません。
Artist22セカンドは59,800円(公式サイトで更に割引あり)なのでラウンド1の『価格』では、より圧勝していました。
Artist22セカンドについてはこちらもどうぞ。
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