漫画の賞を取ったり、持ち込みで担当が付いたりして『読み切り漫画』を掲載し、デビューを果たした新人漫画家は少なくないと思います。
掲載された読み切り漫画の人気があれば次に目指すのは連載です。
しかし漫画は連載をもらうのが至難の業です。
どうしたら連載できるにゃ?
出版社は何を考えているのでしょうか?
勢いで描くしかないんじゃないか?
ぼくもデビュー当時、どうしたら連載をもらえるのかわかりませんでした
・漫画の連載はどうやって決まるのか
・デビュー後に行き詰ってしまったらどうしたらいいか
それでは一般的な漫画連載までの流れを紹介しながら、20年近く漫画家をしているぼくのデビュー後から連載をもらうまでの話もさせていただきます。
そしてデビュー後に連載できずに行き詰ってしまう新人漫画家さんに、連載へ向けて気持ちを切り替える方法をお伝えしようと思います。
下記は記事と同じ内容を動画にしています。
連載を目指すならこちらも必見。
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連載までの流れは?
デビュー後の連載までの道のりは簡単に言うと、連載に足る力が自分にはある。というのを編集部に見せつけることで連載をさせて貰えます。
具体的には読み切りの読者アンケートが上位になったり、アプリ掲載の場合は閲覧数が飛びぬけていたりすれば連載の話になります。
その他にも連載用のネームを描いてそれが面白ければ、一度の読み切り掲載もなくそのまま連載されることもあります。
最近の漫画業界の変化
最近ではこの連載用ネームからの連載パターンが徐々に増えています。
というのも、そもそも出版社にとって読み切り漫画にはそれほど価値はありません。どれだけアンケートが良かろうと、閲覧数が多かろうが直接の売り上げに繋がりにくいからです。
つまり人気連載漫画を作ってはじめて商売になりますし、読み切りで試さなくても作家のSNSの評判などで実力がわかっていることが多いからです。
なので、最初から連載用ネームを描くこともありだと思います。それが評価されれば連載になることがあります。
ぼくの生徒さんも投稿作が評価され、読み切りもなく連載用ネームを描いています
こちらの記事ではデビュー後から単行本が出るまでの担当さんとのやり取りについて書いています。
なぜ連載をもらうのは難しいのか?
連載は紙媒体の『雑誌』では特に難しいです。大きな理由は『2つ』あります。
理由1 お金がかかるから
雑誌は発行、販売にあたり『多額のお金』がかかります。
ほとんどの漫画雑誌が雑誌販売だけでは赤字だと言われています。
そのため出版社はある程度雑誌の総ページ数が決められた中で、より売れる見込みのある『即戦力漫画』を、『伸びしろを感じる新人漫画家』を 社運 をかけて探しています。
新連載の漫画が雑誌の運命を大きく握っている!
理由2 売れるかどうかは誰にもわからないから
そして、もう一つの問題は、『漫画が売れるかどうかは誰にもわからない』ということです。
出版社としては、連載というのははじめたら基本的に最低でも単行本1冊分までは掲載しようとします。
しかしその漫画が読者に受けなかったら1巻分の原稿料と雑誌の掲載ページ分を失ってしまいます。
そのため編集部としても連載を決定するのは難しいのです。
しかし、今ではネットやアプリで公開される漫画が増えてきたおかげで、連載へのハードルがだいぶ下がりました。
アプリの場合、雑誌の発行、流通にお金はかからない上にページ数もあまり気にしなくていいので運営会社も連載を始めやすい環境になっています。
アプリは雑誌より連載をもらいやすい!
具体的に超える壁は?
連載に向けての壁は、周りに何人もいる『新人漫画家』と、そして連載が終了して次の連載に向けて準備をしている『連載経験済みの漫画家』です。
その人たちと競い、自分の方が面白い漫画を描かないと連載できません。
ライバルは新人漫画家だけじゃない
ここでぼくの連載までの経緯についてお話させていただきます。
筆者の連載経緯は?
ぼくはスクウェアエニックスの『ガンガンパワード』でデビューさせてもらいました。
『ガンガンパワード』は新人育成の意味合いの強い雑誌で、3か月に一度発行の読み切り漫画の多い季刊雑誌でした。
読み切りの枠は6作品分ほどで、担当さんから聞いた話だと掲載の倍率は約5倍でした。
つまりぼくは新人漫画家やデビュー済みの漫画家の漫画30本くらいと競ったことになります。
幸運にもぼくはその時の読み切りが雑誌で2位になり、次の漫画で連載をさせていただきました。
ハードルは高いですがデビュー済みの方は一度はこれと同等、あるいはこれ以上のハードルを越えています。
そのことを忘れないように。
誰が連載を決める?
連載を決めるのはどこも編集者が集まり会議を開き決めると思うかもしれませんが違う場合もあります。
『連載』が決まるのはこの『4つ』です。
- 編集部の会議で決める。
- 編集長が独断で決める。
- 決定権を任された編集者が決める。
- 『連載』が賞品になった漫画賞で決める。
1,編集部の会議で決める。
週刊漫画雑誌は出版社の顔となるものなので編集者が集まり、会議をして連載漫画を決めます。
大手だと編集者も多く、漫画『バクマン』でも紹介されていた通り、編集部の班のリーダーだけが集まり会議をする場合もあります。
2,編集長が独断で決める。
月刊誌や隔週誌の場合は編集者の人数が極端に少ないことがあります。その場合編集長が独断で決めることもあります。
3,決定権を任された編集者が決める。
ぼくは編集長ではない一編集者であった担当さんにOKされ、連載をいただいたことがあります。(編集長に軽いチェックはしてもらったそうです)
規模の小さい編集部だとこういうことがあるようです
4,『連載』が賞品になった漫画賞で決める。
これは最近増えてきているようです。
閲覧数でトップになったり、大賞=連載確約というものです。
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デビュー後に行き詰ってしまったら?
デビューはしたものの、連載に結びつかない新人漫画家は多くいます。
そういう方に勧めたい、気持ちを切り替える方法はこちらです。
- いつもと違うジャンルの漫画を描いてみる。
- 読者や担当、雑誌を意識せず自分の好きなものを描いてみる。
- 連載のネームを描いて担当に見せてみる。
- 今の出版社にこだわらず別の出版社や、アプリに売り込みをしてみる。
1,いつもと違うジャンルの漫画を描いてみる
ぼくは行き詰まりを感じているアシスタントさんたちには、今まであまり描いたことのない漫画を描いてみることを提案しています。
新しい漫画を考えることで気づいていなかった自分の才能を発見できる場合があるからです。
2,読者や担当、雑誌を意識せず自分の好きなものを描いてみる。
こちらも大事なことです。読み切りや連載に向いている漫画ばかり考えず好きなものを描いてみてください。
その際、担当さんに必ず見せるようにしてください。編集者の仕事は漫画の良い所を見つけることです。
何か発見があればヒントになる可能性があります。
3,連載のネームを描いて担当に見せてみる。
まずは読み切りを。と担当から言われることが多いと思いますが、読み切り漫画は短いページで『まとめる』ことになってしまい、本来やりたい長い連載に向けた力が育たない場合があります。
面白い漫画ならそのまま連載の道が開くこともあります。
4,今の出版社にこだわらず別の出版社や、アプリに売り込みをしてみる。
雑誌とあなたが描く漫画の相性が悪い場合もあります。
一つにこだわらず、柔軟に描かせてくれる場所を変えましょう。
もし大手出版社で漫画賞を取っているなら、まったく相手にされないということは無いと思います。
今はデジタル市場拡大に伴い、アプリの方が確実にチャンスがあります
新人漫画家の初連載までの道のりは?なぜ連載をもらうのは難しいのか?まとめ
10週で終わってしまうこともある週刊少年ジャンプが良い例だと思いますが、漫画は連載してみるまで読者に受けるかどうかは誰にもわかりません。
結局どの漫画を連載させるかは基準などは無く、どんなに理屈を立てて面白くなる!と確信していても結果は誰にもわかりません。結局は『なんとなく面白くなりそう』ということでしか連載を決めることはできません。
『なんとなく』決めているなら、きれいにまとまった漫画よりも尖った漫画のほうが目につきます。
上の見出しで触れた、『自分の好きなものを好きなように描いてみる』のはどうでしょうか?
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【具体例提案】デビューに近づく『連載立ち上げのプロ』の漫画添削【悩み相談】
ビジネス視点から漫画を考えることも時には必要です。
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